「どうして、自分は運が悪いのだろう……」
そう感じる瞬間はありませんか?
あらゆる悪循環の中で、まるで出口のない迷路を彷徨っているような居心地の悪さを感じている方も、きっと少なくないはず。
この記事では、脳科学者である中野信子氏の著書『科学がつきとめた「運のいい人」』を紐解きながら、繊細な気質を持つ人々が、自分軸で生き抜くための具体的なヒントを提示したいと思います。

村上 亮一運という不確かな存在を科学の視点から見直し、「心地良い自分だけの居場所(オアシス)」を作り上げていきましょう。
運は誰にでも平等に降り注ぐ雨



まず、運というものの本質的な定義からお話しさせてください。
多くの人は、「あの人は生まれつき運が良い」「自分は悪い星の下に生まれた」という風に、運を”固定的な資質”として捉えがちです。
しかし、科学的な見地から見れば、運や不運という現象は、本来「誰の身にも公平に降り注いでいるもの」に他なりません。
言うなれば、運とは「空から気まぐれに降ってくる雨のようなもの」でしょう。



当然、その雨粒が誰の肩に落ちるかは、純粋な確率論的な偏りに過ぎず、個人の人格や運命とは関係がありません。
ここで、数学における「ランダムウォークモデル(酔歩)」を思い浮かべてみてください。
ランダムウォークモデルとは、コインを投げて、表が出たら右へ、裏が出たら左へ進むという試行を繰り返す実験です。
この実験を数千回、数万回と重ねていけば、長期的には”表と裏の出る確率はほぼ二分の一”に収束していきます。
しかし、10回や20回といった短いスパンで切り取ると、不思議なことに「裏が連続して8回出る」といった偏りが発生するのです。



すると、私たちの脳は、この”短期的なランダムの偏り”に対して、勝手に「意味」や「法則性」などを見出そうとしてしまいます。
例えば、マイナスが連続して出た場合には「私は呪われている」と勘違いし、プラスの連続に対しては「私は選ばれし存在だ」と錯誤(思い込み)するわけです。
そして、ここで運が悪いと感じている人は、短期的なマイナスの偏りに遭遇した時点で「もう駄目だ」と諦めて、自ら挑戦(ゲーム)から降りてしまいます。



当然のことながら、ゲームから降りてしまえば、次に訪れるはずだった”プラスの展開を掴む機会”は永久に失われてしまうでしょう。
一方で、運が良いとされている人は、マイナスが続いている状況でも「確率は長期的には収束するはずだ」と信じて、試行回数(チャレンジ)を重ね続けるのです。
なお、中野信子氏は、「運がいい人」を以下のように定義しています。
- 公平に降り注ぐ幸運を「より多くキャッチできる人」
- 降りかかる不運を「事前に防げる人」
- 起きてしまった不運を「幸運に変えられる人」



つまり、運とはただ受け身で待つものではなく、「日頃の考え方や行動パターンによって、主体的に引き寄せ、変えていくことができるもの」なのです。


適者生存の影に隠れた「運者生存」という真実
生物の進化や生存の歴史を紐解くとき、私たちは「適者生存」という言葉を耳にします。
「適者生存」とは、環境に最も適応した個体が生き残り、子孫を残していくというダーウィンの進化論の根幹です。
たしかに、数万年という壮大な時間軸で見れば、この適者生存の法則は正しく機能しています。
しかし、人間の一生という短い時間軸や、少数の個体群という狭い世界においては、別の法則が強く働いていると中野氏は指摘します。
それが、「運者生存」という概念です。



分かりやすい例として、魚のマンボウの生存戦略を見てみましょう。
マンボウのメスは、一度の産卵で約2億7000万個という天文学的な数の卵を海中に産み落とします。
しかし、その膨大な卵のうち、無事に大人のマンボウへと成長できるのは、わずかに1匹か2匹程度に過ぎません。
しかしながら、生き残った一匹のマンボウは、他の2億7000万匹の兄弟たちよりも遺伝的に圧倒的に優れていたから生き残れたのでしょうか?
無論、そんなことはありません。
生き残った個体は、単に「たまたま天敵に出会わなかった」「たまたま海流に流されて安全な場所へたどり着いた」という、”純粋な運”に恵まれただけなのです。
しかし、生き残ったマンボウにとっては、この「たまたまの幸運」こそが、生存のための絶対的な決定打となりました。



さて、この運者生存の視点を持つと、私たちが今この瞬間、息をしてここに存在していること自体の捉え方が大きく変わります。
- 一回の受精において、数億個の精子の中から、たった一つの精子が卵子と結びつく奇跡。
- 母親の胎内で無事に育ち、この世に生まれ落ちる奇跡。
- 数々の病気や事故、災害といった不運をすり抜けて、今日まで生きながらえてきた奇跡。
これらをすべて掛け合わせたとき、私たちは生まれながらにして、すでに途方もない「強運」の持ち主であるという揺るぎない事実に行き着きます。
すなわち、生存していること自体が、すでに天文学的な確率を勝ち抜いてきた、最大の運の結果なのです。



だからこそ、自分は運が悪いと嘆く前に、自分がすでに途方もない確率を乗り越えてきた「生存者」であることを、前向きに受け止めてみましょう。
世界の中心に自分を据えて、自分という素材を愛する
運が良い状態を作り出すための大前提は、「今の自分を無理に変えようとしないこと」です。
なぜなら、世間一般の標準や常識などに自分を強引に合わせようと努力することは、自分自身の個性を殺すことになり、結果として”運を遠ざける”ことに繋がるからです。
中野氏は、これを「世界の中心に自分を据える」と表現しています。
もちろん、これは決して、自分勝手やワガママに振る舞うというネガティブな意味ではありません。



自分の価値観、感覚、そして脳の反応を何よりも大切にし、それらを基準に行動するという”主体的な生き方”を指すのです。
ところで、人間の脳は、神経伝達物質の分泌量や、それらを分解する酵素の働きに「遺伝的な個人差」があります。
例えば、不安を感じやすい脳を持っている人もいれば、恐怖をほとんど感じない脳を持っている人もいます。
当然、この生まれ持った脳の特徴を、努力や根性だけでガラリと変えることは科学的にも不可能でしょう。



しかし、一見するとマイナスに見える欠点や脳の特徴も、環境や捉え方(リフレーミング)次第で、強い武器に転換することができます。
- 不安を感じやすい脳:危険を事前に察知し、トラブルを未然に防ぐ「優れたリスクマネジメント能力」の源泉となる
- 攻撃的な脳:他者とのタフな交渉や、利害が対立するビジネスの現場において、自組織の利益を守り抜く「強靭な突破力」となる
- 幸福感が高く怖いもの知らずな脳:未知の領域への新規開拓や、リスクの大きい営業活動において「圧倒的な行動力」を発揮する



このように、自分の脳の特徴や個性を認めつつ、その素材をどう適材適所で活用するかを考えることーーこれこそが、運をキャッチするための第一歩なのです。
他方で、心理学において、理想の自分と現実の自分が一致し、ありのままの自分を受け入れている状態を「自己一致」と呼びます。
この”自己一致の状態”にある人は、自分のことが好きで、心に余計な葛藤がないため、精神的な余裕が生まれます。
そして、精神的な余裕は、周囲に対して「攻撃性のなさ」や「安心感」として伝わり、結果として、他者からの信頼や協力(運)を引き寄せる好循環を生み出すのです。
逆に、社会のルールや常識を自分よりも優先しすぎている人ーーいわば、”自分を殺してしまっている人”は、他人からも都合よく利用され、搾取されやすい傾向があります。
真面目すぎる人がブラック企業で心身を消耗させてしまう根本原因も、自分を世界の基準から引きずり下ろし、他人のものさしで生きている点にあります。



したがって、時には「いい加減」になり、自分の価値観で動く柔軟性を持つことが、運を護るための強力な防衛策となるのです。


自分自身を「VIP」として丁寧に扱う
前提として、自分を大切に扱っている人は周囲からも大切に扱われる一方で、自分を粗末に扱っている人は周囲からも粗末に扱われてしまいます。
この現象は、心理学や社会学で有名な「割れ窓理論」で説明することができます。
「割れ窓理論」とは、建物の一つの窓ガラスが割れているのを放置しておくと、その建物は管理されていないと見なされ、他の窓ガラスも次々と割られ、やがて地域全体の治安が悪化していくという理論です。
そして、この理論は、個人の人間関係にも当てはまります。



例えば、無意識のうちに、以下のような行動をとっていませんか?
- 穴の開いた靴下を「どうせ見えないから」と履き続ける
- 一人の食事だからと、プラスチックのパックのまま適当に済ませる
- 部屋の散らかりや身なりの乱れを「誰も見ていないから」と放置する
このように、自分自身を雑に扱っている姿は、言葉にしなくても、あなたの佇まいや雰囲気(ノイズ)として周囲に伝わってしまいます。
そして、周囲の人はあなたのそんな様子を見て、「この人はこの程度の扱いをしても怒らないだろう」「雑に扱っても許される人間だ」と無意識のうちに判断するのです。
だからこそ、運を呼び込むためには、自分自身を最優先で「VIP」として扱う必要があります。



ぜひ、他人の目を気にするためではなく、自分自身が自分を心から好きでいられるように、日々の生活を整えていきましょう。
- たとえ一人の食事であっても、お気に入りの上等な器に料理を盛り付ける
- 自分の部屋に、自分のためだけに美しい花や観葉植物を飾る
- 肌触りの良い衣服や、手入れの行き届いた靴を身につける
自分を丁寧に慈しむ行動は、脳に対して「私は価値ある大切な存在だ」という強力な信号を送り続けます。
この「自己承認」が、内面的な自信や余裕を生み出し、結果的に周囲の人々があなたに対して敬意を持って接するようになるという、調和のとれた繋がりが広がっていくのです。



なお、「運は、人との良好な関係性の隙間から運ばれてくるもの」に他なりません。
したがって、自分をVIPとして扱うことは、質の高い人間関係を築きつつ、幸運を呼び込むための、手軽かつ効果的なアプローチなのです。
根拠のない思い込みが行動の質を変える
運がいい人になるための秘訣は、特別な根拠がなくても「自分は運がいい人間だ」と決め込んでしまうことです。
脳科学的な観点から見ると、「自分は運がいい人間だ」という思い込みは、単なる気休めの言葉ではなく、現実の事象に対する「原因の帰属先(解釈の仕方)」を根本から変える力を秘めています。
そもそも、客観的に見て、運がいい人と運が悪い人が遭遇する出来事の確率に、大きな差はありません。
したがって、どちらの人生にも、同じようにトラブルや失敗は発生します。
しかし、その出来事に対する「捉え方」が、その後の行動を決定的に分けるのです。



例えば、仕事で大きなコンペに敗れてしまったという場面を想定してみましょう。
「自分は運が悪い」と思い込んでいる人は、その失敗を「運の悪さ」という、”自分ではコントロール不可能な外部の要因”に帰属させます。
「どうせ自分がどれだけ頑張っても、運に見放されているから無駄だ」と結論付けて、努力を放棄し、ゲームから降りてしまうのです。
一方で、「自分は運がいい」と決め込んでいる人は、同じ失敗に対して異なるアプローチをとります。
「自分は本来、運がいいはずなのに失敗した。ということは、準備の段階に何か見落としがあったのではないか? あるいは、アプローチの仕方に改善の余地があるのではないか?」
このように、失敗の原因を「自分の行動や方法」という、”コントロール可能な内部の要因”に帰属させる(内部帰属させる)のです。
これにより、次の成功に向けた具体的な改善策を模索する「当事者意識」が生まれ、行動を継続することができます。



つまり、出来事に対する捉え方の違いが、長年にわたって蓄積されることで、挑戦の試行回数や行動の質に天と地ほどの差が生まれ、最終的な人生の結果を決定づけるわけです。
また、プラスの自己イメージを持つことが、人間の脳のパフォーマンスを物理的に向上させることは、科学的な実験でも証明されています。
具体的には、イギリスで行われた、メンタルローテーションタスク(図形の精神的回転テスト)を用いた実験です。
この実験では、被験者である女子学生たちに対し、テストの直前に「性別」を意識させる質問をすると、彼女たちの正答率は、男子学生の64%にとどまりました。
なぜなら、「女性は数学的・空間的な処理が苦手だ」という社会的なマイナスの自己イメージ(ステレオタイプ)が無意識に刺激され、脳の機能にブレーキがかかったからです。
しかし、別のグループの女子学生に対し、テストの直前に彼女たちの「所属する有名大学」について質問し、”エリートであるというプライド”を刺激したところーー
なんと、彼女たちの正答率は、男子学生の86%にまで跳ね上がりました。
これは、自分の所属や資質に対するプラスの自己イメージを持つことで、脳の緊張が解け、情報処理能力が最大限に発揮された結果に他なりません。



したがって、何か新しい挑戦をする際に、「自分ならできる」「私は運がいいから大丈夫だ」と思い込むことは、脳のパフォーマンスを最適化するための合理的かつ実用的な方法なのです。


言霊の力と言葉による海馬のハッキング
「自分は運がいい」という思い込みを脳に深く定着させるために、最も効果的な方法が「声に出して言うこと」です。
さて、人間の脳の奥深くには、情報の短期記憶や、その情報が自分にとって重要かどうかを仕分ける「海馬」と呼ばれる部位が存在します。
ただし、心の中で「私は運がいい」と念じるだけでは、海馬はその情報を”日常生活の雑多なノイズの一つ”として処理して、すぐに記憶から消し去ってしまいます。



しかし、実際に自分の口を動かし、声に出して言葉を発すると、脳への入力ルートが劇的に変化するのです。
- 発声するために喉や口の筋肉を動かすという「体性感覚」の刺激。
- 自分の発した声を自分の耳で聴くという「聴覚」の刺激。
- (必要であれば)その言葉を紙に書き出して目で見るという「視覚」の刺激。



このように、多様な感覚器官を同時に働かせることで、海馬は「この情報は私の生存において重要である」と判断し、脳の長期記憶の領域へと深く刻み込みます。
さらに、脳に「私は運がいい」という自己イメージが定着すると、脳の情報フィルター(網様体賦活系:RAS)の役割が変化し始めます。
脳は、自分自身が信じている自己イメージをサポートする物事を、周囲のあらゆる情報の中から、優先的に探し出そうとする性質を持っているからです。
例えば、それまで見過ごしていた些細なチャンスに気付くようになったり、偶然出会った人の言葉から有益なアイデアを閃いたりするーー



まさに、頭の中に「幸運を受信するための超高性能なアンテナ」が立つ状態を作り出せるわけです。
なお、この新しい脳の神経回路(アンテナ)を構築し、習慣として定着させるためには、少なくとも三週間は意識して言葉を発し続ける必要があります。
さらに、体細胞レベルでの変化を実感し、無意識のレベルで運の良さを確信できるようになるには、約三ヶ月の継続が目安となります。
そのため、焦らず、コツコツ取り組む姿勢が大切です。



ぜひ、自分の脳を、心地良い言葉で毎日ハッキングしていきましょう。
他者の幸福を願う利他行動の脳科学
人間は本来、他者と協力し、群れを作ることで厳しい自然環境を生き抜いてきた「社会的な動物」です。
そのため、私たちの脳は、他者との共生を目指し、誰かのために行動する(利他行動する)ときに、高いパフォーマンスを発揮するよう設計されています。
さて、脳科学の研究によると、他人のために自発的にお金を使ったり、手助けをしたりする瞬間、脳の「線条体」(せんじょうたい)と呼ばれる部位が活性化することが分かっています。
線条体は、美味しいものを食べたときや、現金を手に入れたときなど、直接的な報酬を受け取ったときに快感をもたらす脳内ネットワークの一部です。



つまり、他者を助けるという行為は、他人に褒められるから嬉しいのではなく、自分自身の脳が「心地良い」と感じる”報酬系システムそのもの”なのです。
また、誰かに親切にしたとき、脳の「内側前頭前野」がその行動を評価し、脳内麻薬と呼ばれる「ベータエンドルフィン」や、絆を深める「オキシトシン」を分泌させます。
これらの物質は、心身に強い多幸感やリラックスをもたらし、免疫力を高め、さらには記憶力や集中力を向上させる効果まで持っています。
すなわち、利他行動をとることは、結果として「自分自身の心身のコンディションを最高の状態に整え、運を引き寄せる力を高める行為」に他ならないのです。



さらに、中野氏は「助けたときに、相手に対して『ありがとう』と言うこと」の重要性を説いています。
通常であれば、助けられた側が、助けた側に感謝の言葉を述べるのが一般的です。
しかし、運がいい人は、”他者を助けるチャンスを得たこと自体”が、自分の脳に最高の快感物質をもたらしてくれた「幸運な出来事」であると捉え直します。
「私に、あなたを助ける機会(喜び)をくれて、ありがとう」
この謙虚な姿勢を持つことで、周囲の人々との間に強固な信頼関係が築かれ、長期的には数多くのチャンスや支援があなたのもとに集まるようになるでしょう。



一方で、他人を呪ったり、妬んだり、陥れようとするネガティブな思考(悪い祈り)は、脳に致命的なダメージを与えます。
具体的には、誰かを激しく憎んでいるとき、脳内ではストレスホルモンである「コルチゾール」が過剰に分泌されます。
そして、コルチゾールが長期間にわたって過剰に脳内を満たすと、記憶の司令塔である「海馬」の神経細胞を破壊し、物理的に萎縮させてしまうことが科学的に立証されているのです。
つまり、他人への攻撃は、脳科学の観点から見れば、自らの脳を徐々に破壊していく「最悪の自傷行為」に他なりません。



一方で、ライバルの成功や他者の幸福を心から願うポジティブな祈りは、自分自身の脳を護り、活性化させ、運を拓くための理想的な行為なのです。


強運になるために、HSPという資質を活かす方法とは?
ここまで、科学が明かした運の本質について詳しく見てきました。



ここからは、これらの知見を私のような「HSP(感受性が高く繊細な人)」の生き方に重ね合わせて考えてみたいと思います。
さて、HSPは、人口の約二割が存在すると言われており、生まれつき五感が敏感で、物事を深く考え、共感力が非常に高いという気質を持っています。
一方で、この繊細さは、刺激が強すぎる現代社会においては、往々にして「生きづらさ」や「運の悪さ」として感じられがちです。



なぜなら、周囲のノイズや他人の感情、悪いニュースなどを、”通常の何倍もの解像度で受信する”ことで、脳がすぐにオーバーヒートしてしまうからです。
しかし、脳科学的に見れば、この不安を感じやすく慎重な脳の特徴は、人類の生存において不可欠な「危険察知の才能」に他なりません。
かつて、人類が狩猟採集を行っていた時代、草むらのわずかな揺れや、風の匂いの変化に気付き、天敵の存在をいち早く察知して群れに警告を発した存在ーー
それこそが、現代でいうHSPの祖先でしょう。



だからこそ、私たちは、生まれ持ったこの”鋭敏なアンテナ(特別な資質)”を無理に壊そうとしたり、鈍らせようとしたりしてはいけません。
それよりも、このアンテナを活かせる環境を主体的に選び、自分軸で生きるためのチューニング(リペア)を行うことが必要なのです。
まるで、酷使したギターのネックが湿気や張力で反ってしまったとき、トラスロッドを回してミリ単位で反りを調整し、弾きやすさや美しいピッチ(音程)を取り戻すようにーー
私たちもまた、日々の生活環境や人間関係のバランスを微調整し、自分自身の感性が最も美しく響く「チューニング」を施さなければなりません。



そのためには、まず自分自身を徹底的にVIPとして扱い、自分を護るための境界線(バリア)を張ることが重要です。
ところで、HSPは共感力が高すぎるあまり、他人の期待に応えようとしたり、不機嫌な人の機嫌を取ろうとしたりして、自分を犠牲にしがちです。
そうやって自分を粗末に扱っていると、周囲の「エネルギーを奪う人(エネルギーバンパイア)」たちに目をつけられ、”都合の良い便利屋”として搾取されてしまいます。
まさに、これは自分の心の中に「割れ窓」を作ってしまっている状態です。
だからこそ、他人の評価や世間の常識に振り回されるのは、今日限りで終わりにしましょう。



具体的には、自分の「違和感」や「不快感」などを無視せず、最優先の判断基準として、自分が心地良いと感じる時間や空間(オアシス)を死守するのです。
- 一人の時間をじっくりと楽しみ、美味しいコーヒーを淹れて、ゆっくりと好きなエンタメに浸る。
この”徹底的な自己承認”こそが、私たちの心身のコンディションを整え、運を呼び込むための確かな土台となります。
「汚い人」の損切りと、住む世界のチューニング
自分軸のオアシスを守り抜くために、HSPが絶対に身に付けなければならない技術が、「人間関係の損切り」です。



私は、他人のエネルギーを搾取し、不機嫌な態度で支配しようとしたり、言葉にトゲを忍ばせて攻撃してきたりする人々を、自衛の念を込めて「汚い人」と呼んでいます。
かつての私は、どれだけ理不尽な言葉を投げかけられても、「相手にも事情があるはずだ」「私が我慢すれば丸く収まる」と、その場に留まり続けていました。
しかし、先述した脳科学の事実を思い出してください。
汚い人から受けるストレスや悪意は、脳内で大量のコルチゾールを分泌させ、大切な海馬を物理的に萎縮させます。
つまり、繊細な感性を持つ私たちにとって、汚い人との接触は、文字通り「脳を破壊する毒」を摂取しているようなものなのです。



そもそも、そのような不毛な人間関係に耐える義務も義理も、私たちの人生には一秒たりとも存在しません。
だからこそ、(投資の世界で、損失を最小限に抑えるために、保有している株式を売却するように)人間関係においても「これ以上関わると自分の人生が損なわれる」という境界線を引き、物理的・心理的に「損切り」を行いましょう。
- 連絡先を削除し、SNSは即座にミュートやブロックを活用する
- 職場などで避けられない場合は、視線を合わさず、一切の感情を排して事務的に対応する
- 相手の反応を気にせず、自分の違和感を最優先して、その場から立ち去る
なお、ここで大切なのは、「汚い人を激しく憎んだり、復讐しようとしたりしないこと」です。



当然、相手に怒りを燃やしている時間も、あなたの脳内ではコルチゾールが分泌され続けることに加えて、貴重なエネルギーも無駄に浪費されてしまいます。
だからこそ、
「あの人はあの人の世界で、精一杯生きているんだ」
「ただ、私とは住む世界(周波数)が違うだけだ」



そのように一歩引いて俯瞰(ふかん)し、ただ静かに、無感情で離れましょう。
たしかに、世界という巨大なオーケストラには、不協和音を奏でる楽器も存在します。
しかし、あなたがその不協和音の隣で、無理をしてまで合奏(アンサンブル)を続ける必要はありません。
もし、あなたの奏でたい音が、静かで清らかなアルペジオ(分散和音)なのだとしたら、その美しい響きをかき消すような轟音を立てる人から、ただ静かに離れれば良いのです。



つまるところ、自分の世界を美しい音色(キレイな人)で満たすことは、表現者として、そして一人の人間としての、誠実なリスク管理に他なりません。
だからこそ、遠慮せずに、自分が納得できるまで、汚い人を損切りしましょう。


10回以上の転職と挫折の果てに見出した「ゲームから降りない力」
ここで、私の個人的な体験談をお話しさせてください。



私はこれまでに、思い当たるだけでも10回以上の転職を繰り返してきました。
コンビニの店員、ホテルの清掃員、自動車の整備士、新聞配達員、ギターの講師、イベントスタッフ、レンタルビデオ店のスタッフ、引越し作業員、コールセンターのスタッフ、暗号資産取引所の社員、そして証券会社の証券マンなど……。
このように、驚くほど一貫性のない職を転々とする人生です。
とはいえ、仕事そのものは器用にこなすことができ、周囲からの評価も決して悪くありませんでした。



しかし、組織の理不尽な人間関係に疲弊したり、長時間の労働で体調を崩したり、あるいは仕事の「本質的な意義」を見失ってしまったりするたびに、私はヒューズが飛んだように人間関係と仕事をリセットし、逃げ出してきました。
そのほか、中学二年生からギターを弾き始め、プロを目指して札幌の音楽専門学校へ進学したものの、卒業を控えた時期に心身の限界を迎えて鬱(うつ)状態のようになり、数年間を暗い部屋で寝て過ごした挫折の経験もあります。
また、25歳で上京し、バックバンドのギタリストとして多い月で100曲近くを演奏する活動をしていましたが、大きな会場で観客が増えるにつれて、過剰な刺激や違和感に耐えられなくなり、ふたたび人間関係をリセットして音楽活動をストップさせました。
このように、客観的に私の履歴書を見れば、それは「挫折と逃亡の歴史」であり、絵に描いたような「運の悪い人間」に見えるかもしれません。



しかし、私は今、自分のことを「運が良い人間だ」と心の底から確信しています。
なぜなら、これほど多くのリセットや失敗を繰り返しながらも、私は「人生というゲーム」から決して降りなかったからです。
- どれだけ手痛い敗北を喫しても、私は「何かを表現したい」「自分の心地良い生き方を見つけたい」という、内面から湧き上がる好奇心(面白そうかという基準)を捨てませんでした。
- 暗号資産取引所や証券会社という、資本主義の最前線で揉まれた経験は、「お金だけでは満たされない自分の本質」を痛烈に教えてくれました。
- ギターを挫折し、ライブ活動を辞めた経験は、競争や承認欲求から解放された「自分軸の音楽」という新しい価値観や創作意欲をもたらしてくれました。
そして、個人で稼ぐために、せどりやYouTubeなど様々な挑戦をして失敗し続ける中で、唯一成果が出始めた「ブログ(文章)」という武器に出会うことができたのです。
もし、私が最初の鬱状態のときに生きることを諦めていたら……。
あるいは、転職を繰り返す自分を「社会不適合者だ」と責め立て、自己否定の中に閉じこもっていたら……。



間違いなく、今の私は存在していなかったでしょう。
短期的なマイナスの偏り(失敗や挫折など)の連続に惑わされず、「私にはまだ試していない選択肢がある」「次はきっとプラスが出るはずだ」と信じて、試行回数を重ね続けた結果として、私はマルチクリエイターという唯一無二の生き方にたどり着くことができたのです。
失敗したとき、それを自分の運命のせいにせず、「今回のやり方が合わなかっただけだ、次は違うアプローチを試そう」と捉え直すこと。
そんな粘り強いチャレンジ精神こそが、不運を幸運へと転換する、大きな原動力となるのです。
最後に:今日から始める、運のアンテナの立て方
それでは最後に、この記事を読んでくださったあなたが、今日から日常生活の中で実践できる具体的なスモールステップを提示します。
言わずもがな、どれほど素晴らしい知識を得たとしても、実際に行動(アウトプット)に移さなければ、脳の神経回路が書き換わることはありません。



したがって、まずは、以下の2つのアクションから始めてみましょう。
1. 1日数回「私は運がいい」と言葉に出して、海馬をハッキングする
- 朝起きたとき、鏡の前の自分に向かって。
- 日中、仕事や家事の合間に、ふと一息ついたとき。
- 夜、お風呂に入ってリラックスしているときに。
「私は運がいい」
「私は生きているだけで、天文学的な確率を勝ち抜いてきた存在だ」
このように、声に出して自分へ語りかけてみてください。
聴覚や筋肉の感覚を総動員して、脳の海馬に「私は強運である」という自己イメージを強制的にインストールしましょう。



継続することで、あなたの脳は周囲の景色から、”幸運の種”を自動的に見つけ出すようになります。
2. 今日、自分自身を少しだけ「VIP」として扱う
今日、誰かの機嫌を取るために使っていた時間やエネルギーを、ほんの少しだけ「自分を満たすため」に使ってください。
- 欠けたマグカップを捨てて、お気に入りの器でコーヒーを淹れる
- 帰宅途中、自分の部屋に飾るためのささやかな花を一輪買って帰る
- スマホの電源を切り、一時間だけ誰からの連絡も受け付けない「静寂」を自分にプレゼントする



自分を丁寧に扱う行動は、あなたの心の中の「割れ窓」を修復し、周囲から大切に扱われるための強固な土台となります。
ぜひ、自分の人生の主導権(自分軸)を、他人の手から取り戻しましょう。
そして、他人の価値観や世間体に惑わされず、自分自身の心地良さを基準にした「幸せのものさし」を大切にしてください。
共に、繊細で豊かな感性を活かしながら、強運を味方にして、納得感のある自分軸の人生を謳歌しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上、村上 亮一でした。



ではでは、したっけね~!


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