「あの人の前では、やけに饒舌になってしまう」
「この人といると、不思議と落ち着く」
「今日の自分は、なんだか自分じゃないみたいだ……」
相手や場所によって、まるで別人のように態度や性格が変わってしまう自分に、戸惑いや違和感、あるいは不安などを覚えたことはありませんか?
まるで自分という存在が、輪郭のない曖昧なものに思えてくる。
ときには、誰にでも良い顔をしてしまう自分が、ひどく偽善的に感じられて嫌になる。
もし、そんな感覚に心当たりがあるのならーー
村上 亮一この記事では、そんなあなたの悩みを解消する、具体的なヒントや答えを提示したいと思います。
まずは、結論から先にお伝えしましょう。
相手によって態度が変わるのは、あなたが「変」だからでも、「自分がない」からでもありません。
それは、あなたが持つ気質、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の「感じる力」が、ごく自然に働いている証拠なのです。
この記事では、そのメカニズムを解き明かし、悩みの種である「合わせる力」を、あなたの人生を豊かにするための「特別な才能」として使いこなす方法についてお話しします。
なぜ、HSPは半自動的に「相手に合わせる」のか?
HSPの根幹をなす4つの特徴「DOES」。
その一つに、「E:Empathy and emotional responsiveness」(共感力が高く、感情に強く反応する)という性質があります。



これは、私たちが生まれつき、非常に高性能な「感情のアンテナ」を持っているようなものです。
相手の表情 / 声のトーン / 目の動き / 仕草などといった些細な情報から、その人が何を望んでいるのか、どんな状態であるのかを、良くも悪くも敏感に察知してしまいます。
そして、そのアンテナがキャッチした情報に、私たちの心と体は、半ば自動的に反応するのです。
- 相手が興奮して楽しそうに話していれば、自分の中の「明るい側面」が引き出される。
- 相手が静かで落ち着いた雰囲気をまとっていれば、自分の中の「穏やかな側面」が顔を出す。



つまり、「相手に合わせている」というよりは、「相手によって、自分の中の多様な側面が、自然と引き出されている」と表現する方が、より本質に近いでしょう。
あなたの中には、繊細な自分も、大胆な自分も、饒舌な自分も、寡黙な自分も、すべて存在しているのです。
ただ、そのどれが表に出るかが、外部環境によって変わるだけ。
ですから、もう自分を責める必要はありません。
それは、あなたが世界を豊かに感じ取っている、紛れもない証なのです。
「人生の脇役」に成り下がる、合わせすぎの弊害
とはいえ、この素晴らしい性質も、使い方を間違えれば、自らを傷付ける「諸刃の剣」になり得ます。



何を隠そう、私自身も、この「合わせる力」に長年振り回され、自分の人生を見失いかけた一人です。
主にギタリストとして活動していた頃は、バンドメンバーの人生相談に乗るたびに、まるで自分がその苦しみの渦中にいるかのように感情を追体験し、眠れない夜を過ごしました。
友人が仕事の悩みを打ち明ければ、その上司に本気で腹を立て、自分の創作活動そっちのけで、何時間も解決策を考えたりもしました。
もちろん、頼られることに、ささやかな喜びを感じていたのは事実です。
しかし、問題は、その後に訪れる、言いようのない「空虚感」でした。
「あれ? そういえば、俺の曲作り、まったく進んでないな……」
自分の時間や感情、エネルギーといった、人生で最も貴重なリソースを、他人のために使い果たしてしまうーー



そして、気が付いた頃には「自分の人生に主人公がいなくなっている」のです。
さらには、優しくありたいのに、優しくあることに疲れ果ててしまい、人と深く関わることに恐怖を覚える。
その結果、完璧な対応ができないくらいならと、自ら人間関係をリセットしてしまう……。
この負の循環こそ、「合わせすぎる」ことの最も恐ろしい結末でした。
もし、あなたが過去の私と同じような感覚を一度でも味わったことがあるのなら、ここから先は、特に注意深く読み進めてみてください。
解決への道筋:性質との付き合い方《2ステップ》


では、この厄介でありながらも、素晴らしい「合わせる力」と、どう付き合っていけば良いのでしょうか?



私は、そのステップを大きく2つに分けて考えることを提案しています。
それは「守り」と「攻め」です。
ステップ①【守り】:自分を安心させる練習
まず、相手に合わせることに「辛さ」や「しんどさ」を感じている時期ーー
この段階で重要なのは、無理に何かをしようとせず、自分自身を安心させることです。
「合わせなくても、大丈夫」
「断っても、嫌われない」
そう、心の中で何度も自分に語りかけてあげるーー
まずは最優先で、疲弊した自分の心を、丁寧に労わりましょう。



そのための具体的な「守りの技術」を2つ、ご紹介します。
守りの技術1:境界線を引く
これは、他人と自分の間に、健全な「仕切り」を設ける考え方です。
決して、相手を拒絶するための冷たい「壁」ではありません。
例えば、「課題の分離」。



具体的には、「これは、あなたの課題。これは、私の課題」と、心の中で線を引く方法です。
例えば、友人が仕事で悩んでいるのなら、その悩みは、あくまで友人の課題です。
私たちができるのは、話を聞き、共感し、自身の経験を伝えることまで。
その先の「決断」と「行動」は、相手が自らの力で乗り越えるべき領域なのです。
そもそも、相手の課題を奪い、代わりに解決してあげることは、一見優しさに見えて、実は相手の成長の機会を奪う「傲慢」なのかもしれません。
だからこそ、相手を信じて手を出さないーー



それもまた、愛のある一つの優しさの形だと、私は思うのです。
守りの技術2:自分を先に満たす
私の哲学に、こんな一文があります。
「自分の幸せが満たされた時、溢れるものがあれば、それが他人への幸せだ」
言うまでもなく、コップが空っぽの状態では、他人に水を分け与えることはできません。
私たちHSPにとって、自分を優先することは「わがまま」なのではなく、「義務」に近いのです。
創作に没頭する、一人で散歩する、好きな音楽を聴く……。
そうやって、まず自分の心(コップ)を、楽しい気持ちや納得感で満たしてあげる。
そうして自然と溢れ出した「澄んだ水」だけを、私たちは他人に分け与えればいい。



自分を大切にすることは、巡り巡って、他人を大切にすることに繋がるのです。
ステップ②【攻め】:性質を戦略的に「使いこなす」
さて、守りの技術によって心が十分に満たされ、相手に合わせることにそれほど苦痛を感じなくなってきたら、次のステージへ進む準備ができた合図です。
ここからは、「合わせる力」に振り回されるのではなく、その性質を戦略的に「使いこなす」フェーズに入ります。



つまり、この「合わせる力」を、自分を望む状態に導くための「特別なツール」として、能動的に活用していくのです。
とはいえ、活用術は驚くほどシンプル。
具体的には、「引き出したい自分」を持っている人や環境に、意識的に身を置くことです。
例えば、
- もっとアクティブになりたい時:エネルギッシュで、フットワークの軽い友人と会う。
- 心を落ち着けて内省したい時:物静かで、思慮深い人と過ごす。あるいは、静かなカフェに一人で行く。
- 新しいアイデアが欲しい時:自分とは全く異なる分野で活動している人と話してみる。
このように、無意識・半自動的に発動していた「合わせる力」を、今度は自分の意思で、意識的にコントロールするのです。
「相手に振り回される」という受動的な状態から、「環境を選択して、なりたい自分を創り出す」という、能動的な状態へーー



これは、マルチクリエイターとしての私の生き方そのものでもあります。
様々な分野の知識や技術を吸収し(インプット)、それらを自分の中で掛け合わせ、唯一無二の価値を創造する(アウトプット)。
この「掛け合わせる」という行為の土台にあるのが、まさにHSPの「感じる力」であり、外部環境に合わせて自分を最適化する「合わせる力」なのです。
この視点を持つことで、あなたは「自分がない」という悩みから解放され、「自分は、どんな自分にでもなれる」という、無限の可能性に気付くことができるでしょう。
最後に:あなたの「感じる力」は、人生を導く最高の指針になる
「相手によって態度が変わる」
それは、かつての私にとって、消し去りたいコンプレックスでした。
しかし私は今、この性質を「特別な資質」だと、心から感じています。
世界を深く感じ取り、相手を深く理解し、そして環境に応じて、自分という楽器のチューニングを自在に変えることができる力。



もちろん、今でも疲れることはあります。
そんな時は、先ほどお伝えしたステップ①の「守り」に立ち返り、自分の心身を丁寧に労わって、エネルギーが満たされたなら、再びステップ②の「攻め」へと進み、なりたい自分になるために、環境を選び、人と会うのです。
これで「合わせる力」に振り回されることなく、強力な味方として活用できています。
これからは、その繊細なアンテナを、自分自身の幸せのために使っていきましょう。



あなたの「感じる力」は、他人や社会の顔色をうかがうためのものではありません。
あなたが、あなたらしく、納得のいく人生を歩むためにーー
進むべき道や、会うべき人、身を置くべき場所を教えてくれる、最高の「道しるべ」なのです。
ぜひ、その気質を活用して、納得感のある自分軸の人生を謳歌しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上、村上 亮一でした。



ではでは、したっけね~!


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