【何者かになりたいHSPへ】マルチクリエイターという生き方のススメ｜専門家ではなく、唯一無二の存在へ

「何者かにならなければいけない」

そんな根拠のない焦燥感から、無意識に疲弊していませんか？

社会が求める「専門家」という理想像。

一つの道を究め、その分野で揺るぎない地位を築くーー

そんな生き方が輝かしく見える一方で、どうしようもない違和感を覚えてしまう。

好奇心の赴くままに様々なことに手を出してはみるものの、どれも中途半端……。

世間で評価される「専門家」にはなれそうもなく、「自分はなんて器用貧乏なんだろう……」と自己嫌悪に陥る日々。

音楽、文章、アート、デザインなどーー興味の対象は次々と移り変わり、ひとつの道を極めることができない自分を、ずっと責め続けていたのです。

成功という名のゴールから、自ら遠ざかろうとしているような、不思議な感覚さえ覚える。

そして、この生きづらさの正体は、私の根性のなさや、飽きっぽい性格のせいだと思い込んでいました。

しかし、ある時、自分が「HSP（Highly Sensitive Person）」という、気質を持つ人間だと知ります。

それは、病気や障害ではなく、単なる特性。

人口の約2割が持つ、ごく自然な個性の一つでした。

その事実を知った時の、目の前の霧が晴れていくような感覚を、今でも鮮明に覚えています。

とはいえ、もちろん万能な提案ではありません。

しかし、あなたのその繊細で豊かな才能を活かすためのポジティブな「生き方の提案」になると考えています。

第1章：なぜHSPは「器用貧乏」だと感じるのか

HSPには、「深く考える(Depth of processing)」「刺激に敏感(Overstimulated)」「共感力が高い(Empathy and emotional responsiveness)」「些細なことに気づく(Sensing the subtle)」という、通称「DOES」と呼ばれる4つの特性があります。

深く考えるが故の「飽きっぽさ」

HSPは、物事の表面をなぞるだけでは満足できません。

常に「なぜ？」を問い、その本質や構造を、半ば無意識に、そして深く探求してしまいます。　

その結果、ある分野の面白さや核心を、比較的早い段階で見抜いてしまうのです。

すると、知的好奇心は次のターゲットへと移っていく。

「もうこの分野のことは大体わかった」と感じてしまいます。

これが、周囲からは「飽きっぽい」「長続きしない」と見えてしまう第一のメカニズムでしょう。

刺激に敏感が故の「疲弊」

新しい挑戦は、常に大量の情報をインプットする必要があります。

HSPの脳は、その一つひとつの情報を、非HSPの人よりも深く、そして広く処理します。

さらに、SNS時代の創作活動は、他人の評価という強烈な刺激に常に晒されます。

心ない一言に深く傷ついたり、逆に過剰な賞賛に気後れしたり……。

この内外からの刺激の波に圧倒されてしまい、次第にエネルギーが枯渇し、活動そのものが続けられなくなるのです。

これも、HSPが「一つのことを極める」のを困難にする大きな要因だと考えられます。

共感力が高いが故の「拡散」

感受性が豊かで共感力が高いHSPは、様々な分野で活躍する人や、心を揺さぶる作品に、まるで自分のことのように感情移入します。

「こんな風にギターが弾けたら」
「こんな文章が書けたら」
「こんなデザインが作れたら」

その憧れは、すぐに「自分でもやってみたい」という強い衝動へ変わります。

平たく言えば、「良くも悪くも影響されやすい」ということでしょう。

その結果として、興味の対象は無限に拡散していくのです。

「器用貧乏」という自己否定のスパイラル

これらの特性が組み合わさることで、「広く手を出すものの、どれも極められない」という状況が生まれると考えられます。

その結果、「一つのことを続けられないのは、自分の意志が弱いからだ」「自分には才能がないんだ」という自己否定のスパイラルに陥ってしまうのです。

第2章：発想の転換で、「専門家」から「マルチクリエイター」へ

私たちはいつの間にか、「一つのことを極めた専門家（スペシャリスト）こそが素晴らしい」という価値観を刷り込まれています。

しかし、変化の激しいこの時代、一つの専門性に固執することは、時に大きなリスクにもなり得るでしょう。

これは、複数の分野を掛け合わせて、独自の価値ーーいわば、唯一無二のオリジナリティを創造する生き方です。

祖父が教えてくれた「楽しむ」という原点

私の祖父は、まさに人生を楽しむマルチクリエイターでした。

カラオケで自作の歌唱テープを作り、ハーモニカを奏で、馬などの動物を中心とした絵を描き、感謝の気持ちなどを文章にしたためて手紙を贈るなど……。

とにかく、自由気ままに創作を楽しんでいたのです。

ただし、そのどれもがプロ級の腕前というわけではありません。

しかし、大切なのは完成度よりも「楽しむこと」そのものなのだと、祖父は背中で教えてくれました。

私もよく祖父と一緒にハーモニカを吹いたり、絵を描いたりして遊んでもらいました。

「広く浅く」ではない、「深く広く」という可能性

HSPの強みは、この「楽しい」を「深く広く」探求できることにあります。

つまり、世間一般で揶揄されるような、「広く浅く」で終わらないのです。

HSPの「深く考える」力は、興味を持った複数の分野、その一つひとつを深く掘り下げることを可能にします。

広く手を出しながら、それぞれの分野で深い洞察を得る。

地層を掘り進めるように、様々な分野の知識やスキルを、自分の内面に蓄積していくイメージです。

スキルの掛け算が生む「唯一無二」の価値

そして、マルチクリエイターの真骨頂は、それらの異なる地層から掘り出したものを「掛け合わせる」ことにあります。

私自身の例で言えば、

「音楽家としてのスキル」×「HSP当事者としての知識」×「文章での表現力」

この掛け算によって初めて、「HSPという繊細さを抱えながら音楽活動を続けることの苦悩と、その先にある希望」という、極めてニッチでありながら、誰かの心に深く突き刺さるテーマを語ることができます。

さらに、ここへ自身の経験や感情などを加えることによって、自然と独自性が増し、唯一無二の存在へと昇華するでしょう。

これは、単なるギタリストにも、単なるカウンセラーにも、単なる物書きにもできない、私だけの独自のポジションです。

今はまだ、バラバラの点にしか見えないかもしれません。

しかし、それらが繋がった時、あなただけの星座が姿を現し、唯一無二の存在として輝き始めるのです。

第3章：HSPがマルチクリエイターとして生きる、4つの確かなメリット

HSPの特性は、見方を変えれば、マルチクリエイターとして生きる上でこの上ないアドバンテージ（強み）になります。

メリット1：飽くなき好奇心を「深く」満たせる

HSPの尽きることのない知的好奇心は、最高のエネルギー源です。

常に新しい分野へ挑戦し、「広く」学びながら、興味を持ったポイントはとことん「深く」掘り下げていく。

その知的探求のプロセスそのものが、人生を豊かにしてくれます。

それは単なる趣味の範疇を超え、「生存×挑戦＝成長」という、人間としての根源的な喜びをもたらしてくれる活動となるでしょう。

メリット2：日常の解像度が上がり、すべてが「創作のヒント」に変わる

マルチクリエイターとしての視点を持つと、何気ない日常がインスピレーションの宝庫に変わります。

あらゆる物事から創作のヒントを得るアンテナが強化され、毎日がもっと楽しくなるのです。

例えば、満員電車で感じる不快感や怒りでさえ、「なぜ人はパーソナルスペースを侵されると不快なのか」「このストレスを音楽や文章で表現できないか」という創作の種に変わります。

その他にも、散歩中に見かける草花の色合い、風の匂い、子供達の声など……。

それら五感で受け取った全ての情報が、あなたの創作活動の引き出しに蓄積されていきます。

つまり、世界の解像度が、格段に上がったのです。

メリット3：あなただけの「才能」で輝ける

「売れないのは才能がないからだ」と、かつての私は思い込んでいました。

しかし、それは間違いだったのです。

多くの場合、それは「才能がない」のではなく、「自分の才能を活かす場所や見せ方を間違えている」だけ。

適した場所や見せ方がわかれば、自分自身を輝かせられるのです。

彼らは、圧倒的な技術力だけで人を惹きつけていたわけではありませんでした。

その人柄、ステージ上での佇まい、音楽に対する哲学など……。

そういった、技術以外の様々な要素が複雑に絡み合い、その人だけの「魅力」という名の才能になっていたのです。

マルチクリエイターとして多様な経験を積むことは、あなただけの人間的魅力を深め、それが結果として、誰も真似できない「才能」として輝き始めるでしょう。

メリット4：心のセーフティネットを構築できる

刺激に敏感で、心が揺らぎやすいHSPにとって、活動の柱を複数持つことは強力なセーフティネットになります。

一つの活動で行き詰まっても、別の活動が気分転換になり、心を健やかに保ってくれます。

特に、刺激を求める気質（HSS型）を併せ持つHSPにとっては、意識的に「何もしない日」を設けるのと同じくらい、活動のチャンネルを切り替えることが有効な休息になり得ます。

また、収入源を複数持つことは、経済的な不安を和らげ、創作活動における精神的な安定や自由度を高めてくれるでしょう。

「これを（例えば、納得できない仕事や活動などを）やらなければ生きていけない」という強迫観念から解放され、より純粋な動機で創作と向き合えるようになるのです。

第4章：マルチクリエイターへの道を歩み出すための、具体的な最初の一歩

「そうは言っても、何から始めれば……」と感じるかもしれません。

でも、「やらない後悔」だけはしたくないと思いませんか？ 

なるべく若いうちに様々なことに挑戦して、本当の自分を知りたいーー

その気持ちこそが、最初の一歩を踏み出すための意欲やエネルギーになります。

ステップ1：己の棚卸し 〜あなただけの「自分軸」を見つける〜

まずは、あなたの心を揺さぶるものが何かを、徹底的に知ることから始めましょう。

「好き」や「得意」を書き出すのはもちろんですが、それだけでは不十分です。

「どうしても許せないこと」「理不尽だと感じること」「涙が出るほど感動したこと」「時間を忘れて没頭できること」など……。

ポジティブな感情も、ネガティブな感情も、全てがあなたの「自分軸」を形作る大切な要素です。

ノートなどに書き出すことで、あなたの魂の輪郭が、少しずつ見えてくるはずです。

ステップ2：小さな実験 〜「60点でいい」と呟いてみる〜

HSPは、100点を目指すが故に、最初の一歩が踏み出せなくなる傾向があります。

その完璧主義の呪いを解くための魔法の言葉が、「60点でいい」です。

ブログを1記事書く、スマホで撮った写真をSNSに投稿する、鼻歌を録音してみるなどーーどんなに拙くても構いません。

大切なのは、自分の内側にあるものを「世に出す」という経験そのもの。

アウトプットすることで、初めて得られるフィードバックや、次なる課題が見えてきます。

ステップ3：共感で繋がる 〜孤独からの解放〜

あなたの小さな実験を、世界に向けて発信してみてください。

すると、その発信に共感する人が、必ず現れます。

HSPは、その深い共感力故に、他者と深く繋がることを渇望しながらも、傷つくことを恐れて一人で抱え込みがち。

しかし、勇気を出して発信することで、同じような価値観を持つ仲間と出会うことができます。

その繋がりは、孤独な創作活動を続ける上での、何よりの支えとなるでしょう。

まとめ：あなたは「何にでもなれる」可能性の塊

「何者にもなれない」という悩みは、裏を返せば「何にでもなれる」という才能の証。

HSPであるあなたの繊細な感性と、尽きない好奇心は、あなたに与えられた最高のプレゼントなのです。

かのスティーブ・ジョブズが言ったように、今はバラバラに見える点（dots）も、未来を振り返った時に必ず一本の線として繋がります。

あなたの多様な興味や経験の一つひとつが、未来のあなたを形作る、かけがえのない点なのです。

HSPとしての自分を丸ごと受け入れ、マルチクリエイターという生き方を選び、あなただけのユニークな人生を創造していく。

そんな生き方を、あなた自身はきっと待ち望んでいます。

マルチクリエイターとして、共に人生を謳歌しましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、村上 亮一でした。