夕方からスタジオ練習の予定が入っているだけなのに、なぜか朝から落ち着かない……。
午前中に山ほどあったはずの自由な時間は、気付けば何も手につかないまま過ぎ去っていく……。
まるで、一日の真ん中に打ち込まれた一本の「杭」(くい)のように、その予定が思考を支配し、時間を奪い去っていくような感覚ーー
もし、あなたがこの感覚に少しでも心当たりがあるのなら。
そして、好きなことをしているはずなのに、なぜか憂鬱になってしまう自分を責めているのなら。
村上 亮一その不可解な「一日の消失感」の正体は、あなたの意思の弱さや、怠慢さが原因ではありません。
それは、全人口のわずか6%しかいないと言われる「HSS型HSP」という、特別な気質が引き起こす、ごく自然な反応なのかもしれないのです。
この記事では、HSS型HSPの気質を持つ私が、自身の経験と試行錯誤の末にたどり着いた「一日の消失感」の正体と、その支配から抜け出すための具体的な対処法についてお話ししたいと思います。
読み終える頃には、あなたを縛り付けていた「何か」の正体がわかり、失われた時間を取り戻すための一歩を踏み出せるはずです。
なぜ、たった一つの予定で一日が消えるのか?
そもそも、なぜHSS型HSPは、たった一つの予定に、ここまで心身を支配されてしまうのでしょうか?
その答えは、私たちの脳が持つ「特有の働き」に隠されています。
「先読み脳」が引き起こす、終わらない脳内会議
私たちHSS型HSPの脳には、未来の出来事を詳細に、そして過剰にシミュレーションする「先読み脳」とも呼べる機能が備わっています。
夕方にスタジオ練習の予定があれば、脳は自動的に、本番で起こりうるあらゆる可能性を想定した「脳内会議」を開始するのです。



例えば、以下のような議題。
- 演奏のクオリティ:
- 「あの難しいフレーズ、今日は完璧に弾けるだろうか?」
- 「新曲の構成、間違えずに演奏できるだろうか?」
- 「もしミスをしたら、メンバーにどう思われるだろう?」
- 機材のコンディション:
- 「ギターの弦は切れないか? 予備は持ったか?」
- 「エフェクターのセッティングはこれで良かったか?」
- 「アンプから理想の音が出なかったらどうしよう?」
- 物理的な移動と準備:
- 「スタジオまでの最短ルートは?」
- 「電車が遅延する可能性は?」
- 「何時に家を出れば、余裕を持って準備できるだろう?」
- 人間関係とコミュニケーション:
- 「今日のメンバーの機嫌はどうだろうか?」
- 「練習後の雑談で、変なことを言わないだろうか?」
- 「うまく馴染めなかったらどうしよう?」
ちなみに、これらの思考は、一度や二度では終わりません。
忘れないように、遅れないように、そして完璧であるようにーーその誠実さゆえに、脳は一日中、何度も何度も同じシミュレーションを繰り返します。
これが、午前中から何となくソワソワして、他のことに集中できなくなる現象の正体。



つまり、あなたの脳は、目の前の出来事やタスクではなく、未来の予定に「過集中」してしまっている状態というわけです。
エネルギーの事前消耗という「最大の落とし穴」
ここで最も重要なのは、私たちを疲れさせているのは、スタジオ練習という行為そのものではない、という事実です。
私たちを本当に消耗させているのは、「その予定を意識し続けること」自体に他なりません。
本来、自由であるはずの午前中の時間は、終わらない脳内会議によって、すべてが「予定を意識するための前座」へと姿を変えてしまいます。
そして、実際に予定の時刻になり、スタジオに着く頃には、すでに心身のエネルギーの大半を使い果たしてしまっているのです。
これでは、最高のパフォーマンスを発揮できないのも当然でしょう。



「好き」を追求するための時間が、いつの間にか「義務」と「苦痛」にすり替わってしまうーーそんな落とし穴があるのです。
HSS型HSPが「一日の消失感」から抜け出す方法


では、どうすれば私たちは、この「一日の消失感」という支配から抜け出し、自分自身の時間を取り戻せるのでしょうか?
もちろん、ここで説明するのは、気合や根性論で乗り越える方法ではありません。
自分の気質を正しく理解し、脳のクセを逆手に取る「戦略」を立てる方法です。



私自身が実践し、効果を実感している3つの対処法をご紹介します。
戦略①:午前中に「区切りのタスク」を設ける
夕方の予定に思考を支配されないためには、午前中に別の「杭」を意図的に打ち込むと楽になります。
それは、ごく簡単な、短時間で完了するタスクで構いません。
- ギターの弦を交換する
- 溜まっていたメールを1通だけ返信する
- 部屋の掃除を5分だけする など
ポイントは、「完璧」を目指さず、とにかく「完了させる」こと。
小さなタスクでも、一つやり遂げることで脳は「達成感」を覚え、思考のループから一度リセットされます。
これにより、午前の時間を単なる「予定の前座」ではなく、「もう一度、自由に動ける時間」として取り戻すことができるのです。
戦略②:準備を終わらせて、脳内会議を強制終了する
脳内会議が延々と続いてしまうのは、未来の「不確定要素」が多すぎるからです。
ならば、その不確定要素を、物理的に一つずつ潰していけば良いのです。
- スタジオに持っていく機材(ギター、エフェクター、ケーブル類など)を、朝のうちにケースへ詰めて玄関に置く。
- 着ていく服を決めて、あらかじめハンガーに掛けておく。
- 演奏する予定のフレーズを、一度だけ音に出して確認しておく。
このように、物理的な準備を早い段階で終わらせてしまう。
そうすることで、脳は「準備は完了した」と認識し、終わりの見えない脳内会議を強制的に終わらせることができます。
「あとは、行くだけ!」



この状態を作り出せれば、あなたの心は驚くほど軽くなり、残された時間を安心して他の創造的な活動に注げるようになるでしょう。
戦略③:積極的に休息を取り入れる
音楽において、休符がなければ美しいメロディが生まれないように、私たちの人生にも「休符」は不可欠です。
特に、一つの予定にエネルギーを奪われがちな私たちHSPは、予定の前後に、あえて「何もしない時間」を意識的にスケジュールへ組み込むことを強くオススメします。
「16時からのスタジオ練習に備えて、15時からは好きな音楽を聴きながらコーヒーを飲もう」
これは、単なる「休憩」や「サボり」ではありません。
過剰な刺激から脳を守り、消耗したエネルギーを回復させ、次の活動へのパフォーマンスを最大化するための、重要な「メンテナンス」なのです。
このように、休息すらも「自分で選んだ大切な予定」として定義し直すーー
この意識の転換が、他人にコントロールされているという「拘束感」からあなたを解放し、人生の主導権を取り戻すキッカケになります。
また、良質な休息は、次の創造性を高めるための「未来への投資」です。



臆することなく、充実した未来のために、存分に休息を謳歌しましょう。
最後に:あなたの繊細さは、唯一無二の特別な資質である
ここまでお話ししてきたように、午後の予定一つで一日が消えてしまう感覚は、あなたの弱さではありません。
それは、物事を深く捉え、誠実に向き合おうとする、あなたのHSPという気質が持つ「正直な反応」なのです。
だからこそ、自分を責めないでください。
「予定が一つあるだけで、一日が使い物にならなくなる」
その事実は、裏を返せば、こうも言えるのではないでしょうか?



「予定さえなければ、丸一日を驚くほど創造的に使える力を持っている」と。
一つの専門性を極めるだけでなく、音楽、文章、デザインといった複数の分野を掛け合わせ、唯一無二の価値を創造する「マルチクリエイター」という生き方が、好奇心旺盛で、一つのことに留まれないHSS型HSPの可能性を最大限に引き出してくれると、私は信じています。
あなたのその繊細な感受性は、決して克服すべき欠点などではありません。
それは、世界の美しさを人一倍深く味わい、他の誰にも真似できない、あなただけの作品を創造するために与えられた、特別な資質なのです。
気質の扱い方ーーいわば「HSPの取扱説明書」を正しく理解し、少しだけ扱い方を変えてあげるだけで、これまであなたを苦しめてきた生きづらさは、やがて、あなたを輝かせる、唯一無二の強みへと変わっていくでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上、村上 亮一でした。



ではでは、したっけね~!


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