【エッセイ】初めてギターを弾いた日

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【エッセイ】初めてギターを弾いた日
村上 亮一

ギターを弾いている村上です。

……という書き出しを、私は何度もしてきたような気がしますが、今回はその「始まり」について話したいと思います。

「ギターって、いつから弾いてるの?」

こう聞かれたとき、私はちょっと困ります。

15歳から、とは言いやすいですが、正確には「もっと前」だから。

じいちゃんがアコースティックギターを持っていたんですよね。

弦がいくつか切れた、ぼろぼろのアコースティックギター。

たぶん、小学生の頃だったと思います。

ぼんやりとした記憶しかないけれど、じいちゃんの部屋の隅にそのギターが置いてあって、なんとなく弦を弾いた記憶がある。

ボ〜ン、っと鳴った。

それだけで満足しました。

「ふ〜ん、こういう音が出るんだな」と思って、それでおしまい。

当時の私は、ギターに対してまったく興味がありませんでした。

それよりも、ゲームとかアニメとか漫画とか、それこそイラストを描くとか、そっちのほうが断然楽しかった。

……もちろん、今もゲームとかアニメは好きですし、イラストを描くのも大好きですけどね。

目次

紺色のギターと、ゆず

では、「本当の」ギターとの出会いはいつかというと、15歳のときです。

中学生の頃ですね。

友達の家に遊びに行ったんですよ。

4〜5人くらいで集まって、なんてことのない日だった。

そのとき、友達の一人が紺色のアコースティックギターを持っていた。

で、その友達が「ゆず」の曲を弾き始めたんです。

「サヨナラバス」だったか、「夏色」だったか……正確には覚えていないけれど、とにかくゆずの曲だった。

「思っていたよりも大きな音がするな〜」というのが、そのときの第一印象です。

木製のボディーから、あんなに豊かな音が出るものなのかと、素直に驚いた。

そして、楽しそうに弾いている友達の姿を見ながら、私はぼんやり思っていました。

「ちょっと弾いてみたいかも」

それだけ。

本当に、それだけの気持ちだった。

まさかその後、音楽の専門学校へ行くほどギターを本気でやることになるとは、このときの私には到底想像もできませんでした。

それに、「弾いてみたいかも」の気持ちって、かなり軽いものです。

軽かったんですよね、本当に。

だから余計に、不思議だと思います。

あの何気ない日が、私の人生をこんなにも変えてしまったなんて、と。

大好きなB’zを弾こうとして、撃沈した

そんなこんなで、友達からギターを借りたんですよ。

「ちょっと弾いてみたい」が「弾かせてくれ」になるまで、たぶん大した時間はかかっていない。

さっそく教則本も借りて、家でギターと格闘し始めました。

で、当然というか、必然というか。

私が最初に弾こうとしたのは、B’zの曲です。

なぜ、B’zなのか?

その答えはシンプルで、私が一番好きなアーティストだから。

親や叔母の影響で、幼い頃からB’zをよく聴いていました。

いわば、B’zの英才教育です。

「松本さんのようになりたい!」という気持ちは、ギターを持った瞬間から既にありました。

しかしーー

弾けない。

全然、弾けない。

指が動かない。

コードは押さえられない。

「これ……本当に人間が弾いてるのか?」と思うくらい、B’zの曲は難しかった。

まぁ、当然と言えば当然なんですけどね。

ほとんどギターを持ったことのない人間が、いきなりB’zを弾こうとしているんだから。

とはいえ、当時の私に悔しさはほとんどありませんでした。

なぜなら、音楽で食べていこうとか、プロになろうとか、そういうことはまったく考えていなかったから。

「ちょっと弾いてみたかった」だけだから、弾けなくても「まぁ、そうか」ってなもんで。

気楽なもんです。

なんとなくコードを押さえてみたり、教則本を眺めてみたり、単音で適当にメロディーを拾ってみたり。

そんな感じで、のんびりとギターを楽しんでました。

TUNAMIのメロディーを弾けた日

そうして、のんびりギターをいじっていたある日のこと。

教則本に載っていた、サザンオールスターズの「TSUNAMI」のメロディーを、単音で弾けたんですよ。

……あっ、これがギターか、と思った。

なんというか、あのとき初めて「ギターを弾いている」感覚が来た気がしたんです。

コードを押さえているときとも、適当に弦を弾いているときとも、違う感覚。

頭の中に浮かんでいるメロディーが、そのまま指先を通して、ギターから出てくる。

そんな、「自分が音を出している」というような感触。

それが、とんでもなく気持ちよかった。

「あっ、これは面白い」

そう思った瞬間に、何かのスイッチが入った気がします。

それまでのんびりだったギターへの興味が、一段階上がった感じ。

「B’zを弾きたい」という気持ちも、より具体的な熱量を持ち始めた。

松本さんになりたい、という感情が、「なれるかも」に変わりはじめた。

そして、エレキギターが欲しい、という欲求も生まれた。

……もちろん、「音楽で食べていきたい」という野望まで。笑

「TUNAMIのメロディー」一発で、ずいぶんと影響されたものです。

「誰よりも上手くなりたい」という感情

不思議なことに、ギターを弾き始めたら、周りの友達もギターを弾き始めるんですよね。

伝染するんですよ、ギターって。

しばらくすると、自分と同い年の友達だけじゃなく、先輩や後輩も弾き始めた。

そうなってくると、人間というのは単純なもので。

「誰よりも上手くなりたい!」という気持ちが芽生え始めます。

同級生はもちろん、先輩も後輩も関係ない。

校内で誰よりも上手くなる!

それを意識して、練習し始めました。

今思えば、随分と子どもっぽい動機ですけどね。

でも、あの「誰よりも上手くなりたい」という感情は、馬鹿にできないと思ってます。

プライドというか、負けたくないという感覚というか。

その単純な感情が、練習時間を増やして、上達を加速させました。

ありがたいことに、Fコードで苦労した記憶もないし、指も比較的速く動いた方だった。

割とトントン拍子に上達していった気がします。

周りからは「才能あるね!」とか、「天才だね!」なんて言われることもありました。

……ちょっと、良い気分でしたよ。笑

そりゃ、嬉しいじゃないですか。

どんどん上達する自分と、トップを走っている爽快感。

まさに独走状態。

めちゃくちゃ気持ち良かったです。

でも、B’zは相変わらず難しくて、全然弾けませんでした。

そこだけは変わらなかった。

「BUZZ!! THE MOVIE」が、すべてを変えた

ギターを弾き始めて数ヶ月経った頃のこと。

B’zのライブビデオ「”BUZZ!!” THE MOVIE」を観たんです。

ちなみに、VHS(ビデオテープ)でした。

今の若い人には伝わらないかもしれないけど、当時はVHSの時代で。

DVDどころか、巻き戻し・早送りをしながら観る、あのガチャガチャいう機械が現役だった。

自分の部屋のテレビデオ(懐かし!笑)で再生するんです。

(それは、さておき)そのビデオを観終わったとき、私は汗だくでした。

座ったまま、汗だく。

冗談抜きで、座ったまま、汗をかいてました。

もう、大興奮です。

稲葉さんのパフォーマンスが圧倒的なのはもちろんですが、何よりも松本さんのギターに完全にやられました。

感動、衝撃、また感動。

ギターってこういうものか、と思い知らされました。

ギタリストってこういうものか、と。

観終わった瞬間に、「あっ、ギタリストになろう」という確信が生まれた。

某カレーのCM並みに(いや、それ以上に)強く決意しました。笑

あれが「プロを目指す」と決めた瞬間だったと思います。

「ちょっと弾いてみたいかも」からの、「ギタリストになろう」まで。

たぶん、半年くらいの話です。

早い。

あまりにも早い変化ですが、それくらい強烈だったんですよね、あのライブビデオが。

あの日がなければ

結局、何が言いたいかというと——

あの何気ない日が、すべての始まりだったということです。

友達がアコースティックギターを弾いていた、あの瞬間。

思っていたより大きな音がしたこと。

楽しそうに弾く友達の姿を見て「ちょっと弾いてみたいかも」と思ったこと。

それだけのことが、私の人生を音楽の専門学校へと向かわせ、上京させ、今もギターを弾き続けている人間にしてしまった。

おそろしいですよ、本当に。

とはいえ、キッカケなんて、そんなもんなんでしょうね。

「弾いてみたいかも」の一言で、人生が変わる。

もしあの日がなければ、私はギターを弾いていなかった。

音楽の専門学校にも行かなかった。

松本孝弘さんに憧れることもなかった。

……まぁ、相変わらず、B’zは好きだっただろうけど。笑

でも、そう考えると、あの友達に感謝しないといけないな、と思うんですよね。

あいつがゆずを弾いていなければ、私は今ここにいないから。

ゆずを好きでいてくれて、ありがとう。

アコースティックギターを持っていてくれて、ありがとう。

あの日に、楽しそうにギターを弾いていてくれて、ありがとう。

……ちょっと大げさですかね?

でも、本音です。

人生の転機なんて、だいたいそういう「何気ない瞬間」にやってくるんでしょうね。

当然、「これが転機だ!」なんて看板は、どこにも出ていない。

だからこそ余計に、日常の些細な出来事や感情を、丁寧に拾っていきたいと思います。

あのとき「ちょっと弾いてみたいかも」という、小さな気持ちを無視しなくて良かった。

HSPの気質があるから(些細なことに気づく、というやつが)そういう小さな感情を見逃さなかったのかもしれません。

まぁ、本当のところは知らんけど。笑

とにかく、あの感触だけは今でも覚えています。

単音で「TUNAMI」のメロディーが弾けたあの瞬間の、ちょっとした達成感と興奮。

B’zのライブビデオ「”BUZZ!!” THE MOVIE」を観て抱いた、ギタリストへの夢。

これらがすべての始まりだった。

大切な思い出です。

そんなこんなで、引き続き、自分軸の人生を謳歌していきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、村上 亮一でした。

村上 亮一

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