あなたは、ライブを心から楽しめていますか?
ステージの上、スポットライトや声援を浴びながら、観客からの期待に満ちた視線を感じる……。
ミュージシャンやギタリストにとって、それは本来、最高に輝ける瞬間のはずです。
それなのに、なぜか胸がざわついて、時間が経つほどに消耗していく。
ライブ後は心身ともにクタクタに疲れ果ててしまい、楽しさや喜びなどのポジティブな余韻を味わうことができない。
SNSにアップされる「最高のライブでした!」という感想を見るたびに、自分の心とのギャップに戸惑い、ため息をつく。
「ライブは盛り上がっているのに、なぜか辛い……」
もしあなたが、そんな言葉にならない違和感を一人で抱え込んでいるのならーー

大丈夫です。
それは、あなたのやる気がないからでも、音楽への情熱が足りないからでもありません。かつての私も、同じ悩みを抱えていました。
この記事では、HSP気質のギタリストにとって、なぜライブが辛いものになり得るのか、そして、ライブという選択肢を手放した先にある、あなただけの「幸せな音楽活動」について、私の経験を交えながらお話ししたいと思います。
なぜHSPギタリストにとってライブは「不幸の元凶」になり得るのか?
結論から言うと、「HSPの繊細な気質と、ライブという環境の相性が合わない」場合があるからです。
HSPの提唱者であるエレイン・アーロン博士は、HSPの特性を4つ、その頭文字をとって「DOES(ダズ)」と名付けました。
この「DOES」とライブ環境を照らし合わせると、その理由が驚くほど明らかになります。
D:深く処理する(Depth of Processing)
HSPは、物事を深く、多角的に、そして徹底的に考え抜く傾向があります。
これは、作曲やアレンジといった創造的な作業においては計り知れない才能となります。
しかし、ライブにおいては、この特性が自分を苦しめる原因になり得るのです。
例えば、ライブ前には「あの曲のあのフレーズ、もっと良い運指があったんじゃないか」「MCで何を話そう、変に思われないだろうか」と、考え得るあらゆる可能性をシミュレーションしてしまい、本番前にはすでに疲れ果ててしまう。
本番中にほんの少しミスをすれば、そのことが頭から離れなくなり、後の演奏に集中できなくなる 。
そしてライブ後には、延々と一人反省会が始まり、「あの時こうすれば……」という思考のループから抜け出せなくなるのです。
O:過剰に刺激を受けやすい(Overstimulated)
HSPの神経系は、刺激に対する感度が高く、些細なことでも敏感に察知します。
つまり、五感が非常に鋭敏なのです。
一方、ライブハウスは「刺激が連続する」ような場所です。
PAから出力される大音量のサウンド、絶え間なく点滅する照明、スモークや汗の匂い、密集した人々の熱気、そしてフロアから注がれる無数の視線や声援……。
HSPではない人にとっては心地よい興奮材料だとしても、私たちにとっては、処理しきれないほどの情報が一気に流れ込んでくる状態なのです。
脳のキャパシティはあっという間にオーバーし、演奏を楽しむどころか、ただその場に立っているだけで精一杯、という状況に陥ってしまいます。
E:感情移入しやすく、共感性が高い(Emotional Reactivity and High Empathy)
HSPは、他人の感情をまるで自分のことのように感じ取る、高い共感性を持っています。
ステージに立つと、フロアにいる一人ひとりの感情まで、まるでスポンジのように吸収してしまいます。
「楽しんでくれているかな」という不安、「つまらなそうにしている人がいるかもしれない」という恐怖。
観客の感情だけでなく、バンドメンバーのちょっとした焦りやイライラにまで同調してしまい、演奏が終わる頃には、自分のものではない感情で心が満たされてしまいます。
「楽しませなければ」という思いが強すぎるあまり、自分自身が楽しむことを、完全に忘れてしまうのです。
S:些細な感覚に気づきやすい(Sensitivity to Subtleties)
些細な音や光、匂いの違いなど、他の人が気づかないような微妙な変化を察知する能力です。
これもまた、音作りやミックス作業においては絶大な武器となります。
しかしライブでは、この能力がノイズになり得ます。
自分のギターのチューニングのほんの僅かなズレ、アンプから聞こえる微細なノイズ、他の楽器との音の混ざり具合の違和感などーー
他の誰も気づかないような些細なことが気になってしまい、演奏そのものへの集中力を削がれてしまうのです。
これら「DOES」の特性が、ライブという環境と衝突することで、音楽活動は「不幸の元凶」へと姿を変えてしまうのです。
「ライブ活動=成功」という価値観への疑問
私たちは、いつの間にか「ミュージシャンはライブをしてこそ一人前」「ライブでの成功がすべて」という、価値観に縛られがちです。
しかし、本当にそうでしょうか?
少しだけ音楽史を振り返ってみましょう。
例えば、ザ・ビートルズは、そのキャリアの後半、ライブ活動を完全に停止し、レコーディングに専念することで、ロックの概念を覆す数々の歴史的名盤を生み出しました。
近年では、ビリー・アイリッシュのように、自宅のベッドルームから世界的な音楽を発信するアーティストもいます。
彼らは、ライブというフォーマットに固執せず、自分たちの創造性が最も発揮される場所を選んだのです。
つまり、音楽で幸せになるためのゴールは、決して一つではありません。
もし、あなたが音楽を始めた最初の動機が「部屋で一人、ギターを弾くのが好きだったから」だとしたら、その原点を、無理にねじ曲げる必要はないのです。
まずは、その価値観を見直すことから始めましょう。


ライブ以外で輝く! HSPにおすすめの音楽活動5選
では、ライブ以外にどのような選択肢があるのでしょうか。
ここでは、HSPの繊細な感性が「才能」として輝く音楽活動を5つ、具体的な始め方と共に掘り下げてご紹介します。
1. 作曲・編曲活動に専念する
自分の部屋などの安心できる空間で、心ゆくまで自分の世界観を追求できます。
誰にも邪魔されず、メロディやハーモニーと向き合う時間は、HSPにとって至福のひとときです。
始め方: Logic ProやCubaseといったDAWソフトを導入し、まずは好きな曲のコピーから始めてみましょう。今はYouTubeやブログなどで質の高いチュートリアルが無料で沢山見つかります。完璧を目指さず、まずは1コーラスだけでも完成させることを目標にしてみてください。
2. レコーディング・音源制作
ライブのような一発勝負の緊張感とは無縁です。
自分が納得いくまで何度でも録り直し、最高のテイクを追求できます。
音の細部にまでこだわる繊細な感覚が、作品のクオリティを極限まで高めてくれるでしょう。
始め方: オーディオインターフェースという機材があれば、ギターやマイクをPCに繋いで、高音質な「宅録」が始められます。数千円から手に入るものも多く、思ったよりも手軽にスタートできます。
3. オンラインでの作品発信(YouTube, SNSなど)
完成した作品を、あなたの好きなタイミングで世界に発信できます。
物理的な距離を超えて、あなたの感性を本当に理解してくれるファンと、深く、穏やかに繋がることができるのです。
始め方: TuneCoreやBIG UP!、DistroKidといった音楽配信代行サービスを使えば、個人でもAppleMusicやSpotifyなどで自分の楽曲を配信できます。また、SNSに抵抗がなければ、YouTubeやInstagram、TikTokに「弾いてみた」動画をアップするのも良いでしょう。顔を出さずに、手元や楽器だけを映す形でも全く問題ありません。
4. 少人数でのセッションやコラボ
大観衆の前ではなく、気の合う仲間とスタジオに入り、リラックスした雰囲気で音を交わす。
そんな心地よい環境での音楽活動も素晴らしいでしょう。
オンラインでのデータ共有を通じたコラボレーションなら、時間や場所に縛られず、さらに自由に音楽を楽しめます。
始め方: (正直、私自身は苦手なのですが……)SNSで「#ギタリスト募集」などのハッシュタグを見てみたり、自分から「コラボしませんか?」とDMを送ってみるのも一つの手です。最初は勇気がいるかもしれませんが、同じ感性の人と出会えるチャンスと新たな可能性が広がるでしょう。
5. 知識や経験を発信する(ブログ、レッスン動画など)
あなたがこれまで培ってきたギターの技術や経験、音楽理論などを、必要としている誰かのために発信する活動です。
自分の知識や経験が誰かの役に立つ喜びは、自己肯定感を大きく満たしてくれます。
始め方: まさに、このブログがその実践です。そのほか、noteやBrainといったプラットフォームで有料記事を販売したり、Udemyでオンライン講座を開設したりと、マネタイズに繋げる道も豊富にあります。
まとめ
音楽は本来、私たちを幸せにしてくれるものです。
もし、今あなたが選んでいる活動方法で苦しんでいるのなら、それは、あなたに合った方法ではないーーというサインなのかもしれません。
ここまで紹介してきたように、HSPという気質は、人生はもちろんのこと、音楽活動においても大きく影響するのです。
それを理解した上で、自分に適した音楽活動を模索しましょう。
繰り返しますが、音楽活動とはライブが全てではありません。
ステージの上でなくても、あなたの音楽を輝かせる方法は無限にあります。
大切なのは、世間一般の「成功」の形に自分を合わせることではなく、自分が「幸せ」を感じられる形を、自分で見つけて、選んであげることです。
ぜひ、納得感を得られる音楽活動に、命とも言える「貴重な時間」を注ぎましょう。
この記事が、あなたが「自分だけの幸せな音楽活動」を見つける、小さなきっかけになったなら、これ以上に嬉しいことはありません。
もっとワガママになって、あなただけの音楽の楽しみ方を、一緒に見つけていきましょう。
以上、村上 亮一でした。



ではでは、したっけね~!


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