ZOOMの大人気エフェクター「MSシリーズ」に新作が登場しました。
その名も「MS-200D+」です。
「MS-200D+」は歪みに特化したエフェクターで、驚くべきことに「200種類のドライブサウンド」を内蔵しています。
あいかわらずのコンパクトなボディに、圧倒的な数の歪みエフェクトが収められており、常識を逸した製品です。
膨大な歪みエフェクトを収めた尖ったコンセプトの製品ですが、はたして実用性はあるのか?
細かな仕様を確認しながら、用途や所感などを残します。
なお、あらかじめ個人的な結論だけをお伝えすると、「多くの方には不要な製品」です。
どうぞ最後までご覧ください。
200種類ものドライブエフェクトを内蔵
「MS-200D+」は、単なる1台のストンプボックスではなく、200種類ものドライブエフェクトを内蔵しています。
内訳は以下のとおりです。
・23種類のブースター
・60種類のオーバードライブ
・51種類のディストーション
・44種類のファズ
上記200種類のうち、164種類がZOOMオリジナルとなっており、残り36種類は定番ドライブエフェクトのエミュレーションです。
さらにZOOMオリジナルエフェクトのうち、152種類が新開発の歪みとのことで、既存のZOOMユーザーも必見の内容になっています。
ここまで使うかどうかは別として、ケタ外れの種類の歪みを作り、このコンパクトなボディに収め、さらに手の届きやすい価格で販売するZOOMの技術に驚きが隠せません。
なお、前述のとおり歪みエフェクト以外にTOOLカテゴリーとして「ノイズゲート」と「イコライザー」が別途で内蔵されています。
ノイズゲート(2種)
・NOISE GATE
・ZOOM NOISE REDUCTION
イコライザー(5種)
・GUITAR GRAPHIC EQ
・GUITAR GRAPHIC EQ7
・PARAMETRIC EQ
・LOW EQ
・HIGH EQ
「MS-200D+」1台だけの利用は少ないかもしれませんが、最低限これだけ収録されていれば、ノイズや音質調整に悩まず単体利用も可能でしょう。
マルチレイヤーIRを搭載
ZOOMが新開発した「マルチレイヤーIR」テクノロジーが搭載されており、今まで以上にリアルで生々しいサウンドが得られます。
2022年に発売された別製品「G2 FOUR / G2X FOUR」に搭載されたことで話題となった技術ですが、嬉しいことに「MS-200D+」でも利用可能です。
事前に様々な音量で収録した3つのIRを、ピッキングの強弱(音量)に応じて切り替える技術で、さらに生のアンプに近い弾き心地となり、より一層と生々しいリアルなサウンドが期待できます。
IRの弱点を克服するための技術…大注目です!
最大2つのエフェクトを同時使用
最大2つのエフェクトを同時に使用できます。
また、エフェクト・ルーティング機能により、以下のとおり柔軟な接続方法に対応しています。
・一般的なシリーズ(直列)接続
・パラレル(並列)接続
・2つの歪みを交互に切り替えるオルタネイト接続
パッチメモリーを最大250種類まで保存可能
任意の2つのエフェクトを組み合わせたパッチメモリーを最大250種類まで保存可能です。
また、あらかじめZOOM側が作成した「200種類のプリセット」を内蔵しているため、音作りが苦手な方でも悩むことなく即座に使用できます。
もちろんプリセットを編集することも可能であるため、プリセットをもとにカスタマイズして、自分好みの歪みエフェクトを簡単に作れるでしょう。
iOS用アプリ「Handy Guitar Lab for MS-200D+」が使用可能
専用アプリ「Handy Guitar Lab for MS-200D+(iOS版 )」を利用することで、使い心地が一気に向上します。
USB接続されたスマートフォンやiPad(タブレット)から、以下の操作が可能です。
・エフェクトの追加
・プリセットパッチの入手
・パッチメモリーの編集
視認性の向上により、簡単かつ直感的な音作りに加えて、エフェクトライブラリを更に拡張することができます。
なお、Bluetoothなどの無線接続に対応していない点には注意が必要です。
とは言え、無線機能を備えていない分だけコストが削減されるため、ユーザー側が安価で購入できるメリットも大きいのではないでしょうか。
「なるべく安価に」・「操作は本体だけで十分」と感じる方も多いでしょうから、無難な選択と言えそうです。
高解像度LCDを搭載
選択中のエフェクトに応じてバックライト色が変わる「高解像度LCD」を搭載しています。
オーバードライブは黄色、ファズは赤、ブースターは水色など、液晶画面のバックライトはエフェクトの種類に応じて6色に変わります。
現在選択されているエフェクトの種類が容易に識別できるため、暗いライブ中でも立ったままの演奏でも難なく使用できます。
見た目の鮮やかさや可愛さが増すのも嬉しいポイントです。
カーソル型フットスイッチで足元操作
カーソル型フットスイッチを採用しているため、足元の操作が可能です。
ギターを演奏しながら、パッチメモリーやエフェクト選択、エフェクトスクロールが可能です。
そのほか、音色調整が直感的に行える4つのエンコーダーノブを搭載しています。
とは言え、小さいサイズからもわかるとおり、どんな状況でも操作しやすいとは決して言えません。
立ちながらの足操作には限界があり、ツマミも小さいため回しにくいといった欠点はあります。
当然のことながら、物理的なサイズを考えれば致しかたないところでしょう。
また、どうしても操作が困難に感じる場合には、前述の専用アプリ「Handy Guitar Lab for MS-200D+(iOS版 )」の利用をご検討ください。
なお、従来からのユーザーの強い希望であった「足操作」を可能にした点については間違いなく賞賛できるでしょう。
購入後も進化が止まらない
USB Type-Cポートを活用して、ファームウェアのアップデートも行えます。
つまり、現状の200種類ものドライブエフェクトから、さらに増加する可能性があるというワケです。
その他にも魅力が満載
「MS-200D+」は、軽量コンパクトなデザインでありながら、高い耐久性と操作性を実現しています。
軽量設計により、ギターケースのポケットに収まり、持ち運びも楽々です。
また、エフェクト設定を自動保存するオートセーブ機能やリバート機能(※)により、誤操作によってお気に入りのエフェクト設定を失う心配はありません。
そして、単3アルカリ電池2本で7時間の連続駆動が可能です。
電源の確保が難しいライブハウスやセッションでも安心して使用できます。
さらに、ACアダプター(ZOOM AD-16)の利用や、USB Type-Cポートを介してUSBモバイルバッテリーでも駆動することができ、使う場所を問わず、さまざまな環境での使用が可能です。
そのほか、オープンチューニングやドロップチューニングにも対応するチューナー機能も搭載しており、いつでもすぐにチューニングできます。
音程が合うと液晶バックライトカラーが緑に変わって、視覚的に分かりやすく、立ったままの状態でも楽々チューニングできます。
もちろん、ギターの音を出さない「MUTEモード」でのチューニングも可能です。
結局のところ「MS-200D+」は買いなのか?
個人的な結論は、「多くの方には不要な製品」です。
これだけ聞くと冷たく感じてしまうかもしれませんが、製品コンセプトからも分かるよう、ターゲットを明確に絞り込んだ製品であるため、そもそも万人受けする設計ではないのです。
マルチエフェクターをコンパクトエフェクター並みのサイズにした「コンパクトなマルチエフェクター」としてスタートしたMSシリーズですが、実際の利用においては「ちょい足し」として利用される方も多いでしょう。
もちろん単体利用も可能ですが、現在のギターシステムに追加することで「不足しているエフェクトを補う」、あるいは「システムのコンパクト化」を目指して利用する方法が現実的です。
つまり、「MS-200D+」はMSシリーズの「ちょい足し」を目的としているユーザーに向けた製品であり、「歪みのちょい足し領域」のテッペンを目指しているワケです。
それゆえに「多くの方には不要な製品」であり、かなり尖ったマニアックな製品であるため、MSユーザーの中でもさらに人を選ぶ製品になっています。
これからもシリーズが展開されて、歪みに限らずあらゆる種類のエフェクトにおける「ちょい足し領域」を攻めることで、ZOOMは「ちょい足し分野の覇者」になるのかもしれません。
あいかわらずのZOOMサウンド
肝心のサウンドクオリティーについては良質です。
この価格・ボディサイズからは想像できないほど、高品質で迫力あるサウンドが楽しめます。
言わずもがな、一昔前の安かろう悪かろうのZOOM製品ではありません。
とは言え、あいかわらず良くも悪くも「ZOOMサウンド」です。
当然のことながら、36種類の定番ドライブエフェクトのエミュレーションにおいても同様です。
「ZOOMサウンド」を形容するのは難しいものの、ZOOMユーザーであれば「あぁ、コレコレ」と感じる音質なのです。
ただし、そんなことは「MS-200D+」や「ZOOM」に限った話ではなく、他社のBOSSやLINE6などでも感じられることです。
さらに言えば、各社のキャラクターがあることでエフェクター市場における差別化が図れます。
ユーザーとしても選択肢の幅が広がるメリットがあり、決してデメリットではありません。
本物が欲しければエミュレーション元の実機を買えば良いし、実機が高額すぎる・希少すぎて手に入らない・そこまで本物(実機)に興味がない方は、エミュレーションされた製品を買えば良いのです。
各社の解釈で作られた伝説の名機たちにおける、本物ではなく「ホンモノ」を楽しむ姿勢が大切でしょう。
似てる似てないの議論を楽しむ一方で、現実に存在しない「誇張された音のファンタジー」を楽しむのも一興です。
そういった意味であれば、164種類ものZOOMオリジナル歪みに関しては、現実に存在しない唯一無二のファンタジックなエフェクトとして、アナログでは表現できない歪みとして重宝します。
なお、サウンドクオリティーが良質とは言え、さすがに高額なエフェクター類に比べると劣ることは否めません。
しかしながら、実際にはそこまで耳の肥えた方は少ないため、多くの方にとって満足できるクオリティーであり、さほど心配する必要もないでしょう。
良い点・イマイチな点
あくまでも現時点で感じる点を備忘録として残します。
良い点
・歪みマニアには垂涎の品
・歪みエフェクターが一気に増えることで、所有欲を満たしてくれる
・自分に必要な歪みが見つからず模索している方にとって、実験的に導入しやすい(方向性を見つけるヒントになり得る)
・安価で歪み(ドライブサウンド)の幅を広げたい方には有用性が高い
・録音をメインに活動するスタジオミュージシャンのような、色々な種類の歪みが必要になる方には有用性が高い
・所有している歪みペダルを手放して、ミニマリスト化できる可能性がある
・コレクター気質の方、ちょい足しエフェクターのレパートリーを広げたい方には有用性が高い
・あらゆる演奏スタイルや音楽ジャンルに対応できる歪みが欲しい方には有用性が高い
・あいかわらず製品自体のコスパが高い
イマイチな点
・200種類も膨大な歪みがあるとは言え、「実際に利用するのは数種類だけ」と少数になり得る
・黄色のカラーリングがビビット過ぎて、人によってはデザインが気に入らない(おもちゃ感を拭えない、既存のギターシステムに組み込んだ際に目立ち過ぎるなど)
・良くも悪くもZOOMサウンドの歪みで、思ったほど歪みキャラクターの幅が広がらない
・製品コンセプトが尖っているため、多くの方にとっては不要
・すでに気に入った歪みがある場合には不要
・アナログにこだわる方には不要
・「セッションにはコレ一台でOK」のような、手軽な使い方が難しい
まとめ
「MS-200D+」は、200種類ものドライブエフェクトを搭載した、コンパクトな歪み特化のマルチエフェクターです。
新開発のマルチレイヤーIRテクノロジーを採用し、22種類のプリアンプエフェクトも収録されています。
また、2つのエフェクトを同時に使用可能で、柔軟な接続方法も提供します。
さらに、最大250種類のパッチメモリーを保存でき、iOS用アプリも利用可能。
高解像度LCDやカーソル型フットスイッチなど、操作性も充実しています。
その一方、音質は良くも悪くも「ZOOMサウンド」で、良質ながら特有のクセがあります。
また、価格・サイズからは想像できない高品質なサウンドではあるものの、高額な他社製品と比べるとやや劣る点も見逃せません。
しかし、歪みエフェクト好きのユーザーや「ちょい足し」を求めるユーザーにとっては満足できる製品であり、購入する際には自身のニーズをよく考える必要があります。
万人にはオススメできない、かなり尖ったコンセプトの製品ですが、類がない唯一無二の製品であり、誰でも購入できるコスパの高さはさすがのZOOMです。
ぜひ、自身に必要な製品であるかご検討ください。
以上、サルルーンでした!
ではでは、したっけね~!
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